「まだ音楽は、思い出じゃない」 京都インディーシーンの到達点。心に深く爪痕を残す鮮やかで優しい珠玉の8曲。 学生でもない、不良でもない、クールな都市感覚でもない、盆地の湿っぽさでもない。 しかし確実に、京都という街で活動するバンドに使い古されたパブリックイメージではないもう1つのリアルが、熱狂が、宝がここにある。小気味良く時に力強く打ち鳴らされドラムに、ドライヴ感と歌心を併せ持つベースが絡み合うというバンドの強みを最大限に活かしきりながら、ボーカルはその歌詞世界やボーカリゼーションを新たな地平へと持ち上げることに成功。重厚でありながら優しく響くギターサウンドとともに狂おしいまでに胸に迫る音世界を構築している。3ピースバンド特有の隙間を活かしたアンサンブルは徹底的に煮詰められ、衝動的なオーバードライブにも、クリーントーンで爪弾かれるアルペジオにも通底して青さと儚さが共存する。ひたすら心地よく響く聴後感に余韻をたっぷり含んだ作品世界は彼らがフェイバリットにも挙げるDinasour Jr.やbloodthirsty butchersを想起させる。 あいまいな感情や揺れ動く心情、何気ない風景の中でふと立ち止まる、そんな日々の1ページを切り取ったかのように丁寧に綴られた言葉は、それを伝えることを強く意識されたように思えるサウンドプロダクションとも相まって着実に僕らの心を撃ち抜いていく。 日々の風景を一変させる音楽も素晴らしいが、日々に寄り添って何年も横で鳴り続けてくれる、そんな幸福なギターロックも素晴らしい。クールに生きていくことなんて出来やしない。汗をかき捻り出した言葉を、上手に歌えなくてもとびきりのメロディーに乗せて歌うことしか出来ない、でもそれが僕らのロックであり、音楽を信じることなんだと気付かせてくれる。 「愛の歌 いつものジョークで とばされて つぶれそうならうたってみるさ」 このアルバムは確実に10年後、20年後も誰かの心のフェイバリットであり続ける強さととびきりの優しさを持った記念碑的力作です。(山口将司/bed)
収録内容
1. ジャストライクビフォア
2. おかねがない
3. ホワイトアルバム
4. ギブミーバック
5. フェード
6. うるさいばか
7. シール
8. ハウトゥクライ
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