2021年にリリースしたEP『Rolling』以降の作品からセレクトした楽曲+新曲で構成されているフルアルバム。Panorama Panama Townはもともとヒップホップのエッセンスも頻繁に取り入れていたが、ここ数年は00年代以降のガレージロックリバイバルへの敬愛を独自のスタイルへと昇華することに焦点を絞っている印象がする。今作でもその部分は踏襲されているが、80年代のロックを彷彿とさせるサウンドが随所に組み込まれているのが、まずは特筆すべき点だろう。先述の『Rolling』に収録されていた「Sad Good Night」でも試みられていた80年代のポストパンク、ニューウェイヴ的なスクエアなノリのビート、”隙間がある”とすら言える最小限の音要素によるアンサンブル、クリーントーンのギターの響きが添加する浮遊感..これらのアプローチが、ここ数年の活動の中で様々な形で開花してきたのを感じる。
例えば新曲「Cranberry, 1984」も、タイトルに盛り込まれている数字を見るまでもなく80年代的なサウンドの風味が香る。ギターリフ+ビートのコンビネーションが、パノパナにとって重要な武器になっていることがよくわかるのも、この曲の興味深いポイントだ。繰り返されるギターリフ+印象的なリズムパターンの展開に耳を傾けていると、胸の内で何とも言えない昂揚感が沸き起こる。あからさまに派手な響きではないのに、自ずとトランス状態へと巻き込んでくれるこのサウンドは、ダンスミュージック的とすら言えるだろう。人力のロックバンドならではの生々しい熱量を持ちつつ、本能的なダンス衝動を誘うサウンドを確立しているのが、現在のパノパナだ。
そして、このバンドの音楽を聴く喜びとしてさらに付け加えるならば、”乾いている”とでも言うべき質感だろう。心の痛みや迷いを胸の内に抱えつつも泣き濡れながら過ごすことはなく、毒を吐いたり、納得できない何かに対してぼやいたりもしながら力強く生きようとする姿が、様々な曲から伝わってくるのがとても独特だ。理不尽な現実の中で適度にやさぐれるデカダンの香り+前に進むことを諦めないひたむきさという不思議な併せ技は、先日配信リリースされた「Black Chocolate」、新曲の「Knock!!!」からも感じ取ることができる。このフィーリングを言い表すのに最適な言葉を探してみたが “ロマンチック”が一番しっくりくるのかもしれない。”グルーヴィー””ダンサブル””エネルギッシュ””ドラマチック””ロマンチック”..多彩な魅力に溢れたパノパナを本作はじっくり体感させてくれる。
収録内容
1-01. Run
1-02. King’s Eyes
1-03. Rodeo
1-04. Black Chocolate
1-05. SO YOUNG
1-06. Cranberry, 1984
1-07. Melody Lane
1-08. Bad Night
1-09. Faceless
1-10. Sad Good Night
1-11. Strange Days
1-12. Knock!!!
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